白濁史上このBL小説がすごい!

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変わる器変わらない心 凪良ゆう『ショートケーキの苺にはさわらないで』


白濁史上このBL小説がすごい第二弾は発売して間もないうちから神作品と名高い「ショートケーキの苺にはさわらないで」をご紹介したいと思います。また凪良ゆう先生です。鉄は熱いうちに打て。

人型のアンドロイド“ドール”が人々の生活の一部になりつつある近未来の日本。セクサロイド機能を持ったアンドロイド(通称“裏ドール”)の魅力にとりつかれた攻め・南里(ナンリ)と、南里のバイト先(ピンサロ)に売り飛ばされてきた男性型裏ドールの受け・シンのお話です。

思春期に裏ドールの魅力にはまり、女性型裏ドールの購入資金を貯めるべくバイトをする大学生の南里は、乱暴なマスターに売り飛ばされそうになったシンを(男性型とはいえ)放っておくことはできませんでした。これまでに貯めてきた250万円をマスターのおっさんに突きつけシンを引き取るのですが南里の男気がかっこよかった…!「後悔はしていない」と言い切るところもいいですね!

突然始まったシンとの生活は不器用ながらに進んでいきます。『ふう』のエピソードやエロコレのエピソード等、童貞の南里と無垢なシンのふれあいが和む〜!!ウオ〜!!タイトルになっているショートケーキももちろん出てきます。ケーキの上の苺をつついて落としてしまったシンに、食べる前には苺にはさわっちゃダメだと教える南里。シンも「……ショートケーキの、苺には、さわらない」と復唱。みなさんこれキーワードですよ!伏線!伏線ですよ!まだ大丈夫ですが、このあたりからふわふわのタオルを用意しておいてくださいね。

初めてキスしたり、初めて体を重ねたりなんかしている二人のほのぼのムードの反面、この作品の時代の日本の情勢がかなり厳しくなっていることがうかがえます。なんてったって憲法9条改正しちゃってますからね。お話の中とはいえ他人事ではない感がひしひし。
激化する情勢の中で、裏ドールも含めた家庭用ドールの徴兵が始まります。赤紙よろしく一般家庭にもドール回収の知らせが来て…南里も、その例外ではありませんでした。このピンチに動くのが序盤から登場している南里の大学のドールサークルの友人たちです。特に南里の一番の友人・阿部ちんがものすごーくいい奴です。もうこのサークルの人らみんないい奴。ハラハラする展開の中でもシンのことを「シンちゃん、シンちゃん」とかわいがるサークルのみんなに癒される…うう…

ピンチを乗り切るため『逃亡』を選ぶふたり。その逃亡劇が終わる時物語は一度結ばれます。ここタオルポイントです。どんどん拭いてください。終わりからまた時は流れ、さらに流れ、いくつかの出会いや大きな出来事があり、また物語は結ばれます。もうここまでくるとどこもかしこもタオルポイントですよ。その中でも序盤に出てきたキーワード「ショートケーキの苺にはさわらない」が再び出てくるんですね。それを言うのは再度シンであったり、ナンリであったり。言葉はリフレインし、時の中で積み上げてきた記憶を呼び起こします。人間と機械であっても、記憶が擦り切れ歪になってしまっても、たくさんの時間が経っても、容れ物が変わっても、もう、人間でなくても、二人の間には変わらない核のようなものがあり、「尊い…」と涙を流すことうけあいです。

凪良先生はあとがきで「何度別れても何度も出会う、出会ったら『あ、この人だ』とわかってしまうふたりというのはいいですね」と書かれています。私これ100回くらい頷いた。バッチリタイトルを出すと「それ、ちげーよ!」と怒られそうですし厳密に言うと少し違うので濁しますが某少女革命アニメやかわい有美子の某モノクル受けの作品、某先生のタイトルに代償がつくシリーズとかが好きな私には頭をトンカチで叩かれるレベルに好きなやつです。お互いが唯一無二だったり運命の二人に弱いんですよね…

そんな唯一無二の二人が、ほのぼのだった前半から一転、国内情勢に巻き込まれて後半ではいったいどうなるのか?その辺はわたくしの文章ではかなーーーーーりぼかして書かせていただきました。だって読んでほしい。お金あげるから買ってそして読んでほしい。
「泣ける!」とか言われると「またまた〜」って天邪鬼を発動させてしまそうそうですけど嘘偽りない事実なんであえて言いますよ!泣けます!タオルは絶対準備しておいてくださいね!
今までも凪良作品で「ウッ…グスッ…シクシク…」とかましてきた私ですがこれ一番水分量多かったんじゃないかな…

泣ける泣けると連呼してますが同じくらいほのぼので純粋に癒し成分もモリモリです!みんないい人。感銘を受ける部分もあり、今回のタイトルも巻末の短編「夜から朝まで」中で心に残った一節に影響を受けて決めてみました。

挿絵は草間さかえ先生。さかえ先生のシンちゃんめちゃくちゃかわいいよー!美しいよー!おふたりのタッグは「未完成」(プラチナ文庫)もでしたよね。こちらもすごーーーく好きな作品なので書きたい。ザ・年下攻め!ノンケ×ゲイ!

どんどん「この凪良ゆうがすごい」になってますけど次回はさすがに別の方にしますよ!凪良先生の最新刊がすばらしかったので急遽食い込ませた第二弾でした。

2月15日
大量のチョコレートをどう消費しようか頭を悩ませる女  白濁