白濁史上このBL小説がすごい!

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究極の需要と供給 凪良ゆう『美しい彼』

白濁史上このBL小説がすごい第一弾、凪良ゆう先生の『美しい彼』のご紹介です。並み居るBL作家さんの中でも屈指の読みやすさを誇る凪良先生。そんな凪良先生の作品の中でも「これ、めっちゃ楽しんで書かれたんだろうなー!」なんて思える勢いのある作品でございます。

【Amazon co.jp限定】美しい彼 書き下ろしショートストーリー付き (キャラ文庫)

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凪良先生は泣けるシリアスめな作品か、底抜けに明るいコミカルな作品を書かれる方かな〜と思ってたんですが、これはそのどちらにも当てはまらなそうな作品ですね。葛西先生の射抜くような瞳の表紙が美しいぞ!

吃音持ちでスクールカースト最下層の攻め・平良(ひら)と誰も寄せ付けない美しさを持つカースト最上位の受け・清居(きよい)が高校二年生のクラス替えで出会ってから、教室での秘密の交流を経て綴られる愛と信仰、時々ツンデレの数年間が書かれています。

平良目線の本編「美しい彼」、ふたりの大学時代の続編「ビタースイート・ループ」でひたすらに清居を崇拝する平良の姿に私は「こ、これが『信仰』か…」とおののきました。いやでも私だってクラスにきよいちゃんがいたら物陰から信仰してる。斜め後ろからきよいちゃんを見つめて授業中イラストなんか描いてるかもしれない。心はすっかりキモオタです。デュフフ。それくらい清居の存在が他とは違うカリスマ性にあふれたものだとひしひし伝わってくるんですね。きよいちゃんが現実にいたらどうしよう。絶対眩しいな。(余談ですが清居は普段穏やかなのに自分のシンメ相手にだけはツンデレになってしまう某J系アイドルの彼を彷彿とさせます…)

 畏怖と信仰に満ちた交流の中で明らかになる清居の生い立ちや夢。清居が孤独な幼少期に強烈に求めたものを完璧な形で差し出してきたのは平良だったんです。唯一無二の相手を崇拝し、その相手もそれを『快感』だと思っているだなんて需要と供給が成り立ちすぎている…相手が嫌がっていればうわっ!ストーカーだ!キモチワルイ!ですが、不思議なほど清居は嫌がっていないし(冷たいけれど)、平良の崇拝は清々しいレベルだし、もうこれ運命じゃないかな?みたいな…パズルがぴったりはまるような感覚ですね。

神で抜いた後は罪悪感で死にたくなるよね。
神が自分のことを好きになってくれるだなんてつゆほども思わないよね。
神は穢しちゃいけないよね。

そんな平良の戒律をぶち壊し、読者を悶絶の境地に叩き落とすのが続けて収録される清居視点の「あまくて、にがい」です!!!!きよいちゃんが気位の高いツンデレすぎてやばい。高校を卒業してもまた平良と会ってやってもいい(上から目線)なんて思ってたのに何も言わない平良に焦れてファーストキスを捧げてみたり、他から平良の情報をさりげなく聞き出してみたり、偶然を装い自分の舞台に来るよう仕向けてみたり、もう読んでるこっちが焦れ焦れだよ!素直になれよ!
一番面白かったのは平良からの連絡をあまりに待ち続けたきよいちゃんが間違い電話を装って平良の携帯に着歴を残し、折り返しをさせて連絡を得ることを思いついた場面です。まどろっこしいし全く素直じゃなくて愛おしすぎる。このいじらしい尽力のシーンは本当に悶え苦しんだので是非読んでほしい。恋は人をおバカにしてしまうんですね。

崇め奉っていた観音様、清居奏に予想外の蜘蛛の糸(屈強なタイプ)を垂らされたカンダタ、平良一成は糸を登り終わった後、どんな僥倖を手に入れたのでしょうか?糸を引っ張っていた清居のいじましさも併せてぜひその目でご確認ください!!!(仏教関連の話ではないですよ!)

ページをめくるたびに萌えボルテージがぐんぐん上昇して清居視点でついに天元突破した感があるくらいには破壊力がすごかった…ダメ押しとばかりに巻末の短編「月齢14」でも私のツボが爆散しました。磨けば光る平良だけど、平良が他の人間に言い寄られるのが気にくわないきよいちゃんが「誰の男に手を−−−」と言いかけるまでになったのがもうなんか、ああ、ああー!うわー!ああうあー!(咆哮)独占欲を見せるまでになったなんて孫の成長を見たような気持ちですよ!清居奏と言う名の宝物です。

信仰が愛情になったり、頑なな気持ちが丸くなったり、時間をかけて互いが影響し合えばし合うほど、関係はゆるやかに変容していきます。出会いの高校生時代から大学生にかけてふたりがどう変わっていったかにも注目して読んでいただければ。

このBL第二弾は興奮冷めやらぬうちに凪良先生の最新刊を取り上げようかな…と思ってる次第です。(もう「この凪良ゆうがすごい」でもいいんじゃ…?)
凪良作品以外もありますからね!気を抜くと「この崎谷はるひがすごい」になりますけど!!!ラインナップはいろいろ考えておりますので!!!



2月13日
時給より売ってるチョコレートふた粒のほうが高い女 白濁